型破りで好奇心旺盛、そして皮肉を効かせたスタイルで知られるグレン・マーティンスは、実験的な美学を体現し、現代ファッション界で最も創造的なデザイナーの一人です。マーティンスは Y/Project のクリエイティブ・ディレクターとして、かつてニッチな存在だったブランドを、アバンギャルドでありながらも日常的に着こなせる、世界的に評価される存在へと導きました。Diesel では、現代におけるデニムブランドの可能性を再定義し、ラグジュアリー、アート、そして日常の必需品をシームレスに融合させました。そして今年、マーティンスは Maison Margiela のクリエイティブ・ディレクターに就任しました。

マーティンスの作品は、遊び心と精密さ、流動性と構造、奇抜さとエレガンスを融合させ、相反する要素を力の源としています。彼のデザイン哲学は「変容」と「多様性」に根ざしており、彼の服は常に変化し続け、着る人との対話を促し、従来の制約に抗います。彼のアトリエでは、ファッションは知的な探求であると同時に感情的な体験となり、急進的でロマンチックかつ現代的なものになります。

H&M Glenn Martens は、マーティンスがH&Mの定番アイテムを独自の視点で再構築したコレクションです。変形デニム、編み込みや解体されたニット、繊細なプリントドレス、ワイヤー入りのアウター、再構築されたトレンチコート、ジュエリー、ヒップまで届くブーツ、形を変えるバッグなどが登場。コレクションのアイテムはすべて、英国の伝統的なスタイルが息づいています。「シルエットや素材を通して、貴族的で英国らしい雰囲気をコレクションに取り入れようとしました。スコットランドを思わせるタータン柄やニットウェアなど、英国の伝統的な要素が盛り込まれています。さらに、豊かなツイードやウール素材をふんだんに使い、トレンチコートやボイルドウールのコートも展開。どれも本質的には伝統的ですが、そこにグレン・マーティンスならではのひねりを加えています。すべてのアイテムにフォイル加工やワイヤーが施されていて、自分で形を変えることができます。遠くから見ると、クラシックなツイードジャケットのように見えるかもしれませんが、実際に手に取れば、それがまったく違うものだとわかるはずです。」とマーティンスは語ります。

こういったアイデアは、このコレクションのコンセプトにもつながりました。「コレクションのベースがとても多様なので、それを反映する“少し奇妙な人々の集団”を描きたいと思いました。だから“家族写真”という発想がぴったりだと感じました。また、このコレクションには英国らしさがあるので、19世紀の貴族や王族の肖像画に見られるような形式を、もっと風変わりでユーモラスな視点から再解釈するのも面白いと思いました。イギリス王室の雰囲気はまるで生きたおとぎ話のように伝説的で、別世界に引き込まれるような魅力があります。その別世界に引き込まれる感覚を、このコレクションでも並行して表現したかったのです。」とマーティンスは言います。

英国を代表するアイコン、ジョアンナ・ラムレイとリチャード・E・グラントが、グレン・マーティンスによる“ファッション・ファミリー”の架空の母親役と父親役を演じました。さらに彼らを支える形で、モデルのクライム・エバンデン、オードリー・マルネー、ジュム・クオクニン、ヘザー・ダイアモンド・ストロングアーム、クララ・デニソンなどが、"ティーンエイジャーたち"の役を演じています。

「このコレクションは、ひとつの“大きなファッションファミリー”だと捉えています」とマーティンスは語ります。「それぞれのアイテムには複数の目的や出発点があり、それぞれに異なる個性があるんです。フォーマルだったり、カジュアルだったり、大胆だったり、控えめだったり、ルールを破ったり、クラシックだったり——その時々でまったく違う表情を見せます。スタイリングや解釈の仕方も人それぞれ。まるで人間のように、それぞれが“自分らしさ”を持ちながら、日々変化し、成長し、異なる感情をまとっていくのです。」

H&M Glenn Martens コレクションは店舗およびオンラインストアにて10月30日(木) から発売。